チームマネージャーコラム

ワールドトランスプラントゲーム報告1
2015年8月22日朝7時半に、我々7人の日本チームは羽田を出発した。第20回となる本大会は、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの南400kmに位置するマルデルプラタという都市で開催される。地球儀でみるとちょうど日本の反対側で、時差は12時間だ。気が遠くなるような道のりを考えるより、参加する移植者が12時間おきに欠かさず飲んでいる免疫抑制剤の、内服時間を変更しないですむから楽チンだと思うことにした。
2007年のバンコクの大会に、チームドクターとして初めて参加させてもらった時の衝撃は忘れられない。移植者(レシピエント)が世界中から集まり、国対抗の形式で様々なスポーツ競技をするこの大会には、喜びとエネルギー、そして感謝があふれていた。移植により健康を回復したからこそできる真剣勝負の競技が、移植医療によってのみ実現されたのだという事実を社会に伝え、ドナーに対する深い感謝を表したいと、参加者全員が考えている。参加者の中には、サポーターとしての家族のほかに、趣旨に賛同したボランティアや、生体ドナーである家族、亡くなって臓器提供された方の家族(ドナーファミリー)もいる。
大会に参加した医療者は皆、眼前に展開する光景に言葉を失う。手術を受けた人たちのめざましい回復は、病院で感じていたときより遙かに大きい。その回復を喜ぶ家族の生き生きとした表情。そして、彼らに暖かいまなざしを送るドナーファミリー。言葉や文化が違っても、世界中で行われている移植医療の根底に流れる精神は変わらない。移植が結びつけてきた一人一人に送られたものが、いかにその人たちにとって大きなものだったかを見せてもらえたと感じるのだ。
アルゼンチンは今、冬だ。でもきっと、世界中から集まった熱い思いで、会場は熱気に包まれるのだろうと胸が高鳴るのであった。

丸井 祐二

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